AI導入の成否を分ける「コンセプトワーク」の重要性:コニカミノルタのMicrosoft 365 Copilot全社展開に見る戦略的アプローチ

目次

AI導入の成否を分ける「コンセプトワーク」の重要性

多くの企業がDX推進の鍵としてAI導入を検討する中、その成否は単なる技術導入に留まらず、戦略的な準備と組織文化への適合にかかっています。特に、導入の目的と目標を明確にする「コンセプトワーク」は、プロジェクトを成功に導く上で不可欠な要素です。

ディスカバリーズ株式会社は、コニカミノルタ株式会社が2026年4月から実施するMicrosoft 365 Copilot(※1)の全社展開トライアルに向け、このコンセプトワーク支援を実施しました。この取り組みは、AI導入における「何のために、どこを目指すのか」という本質的な問いと向き合い、推進チームのビジョンとKGI(重要目標達成指標)/KSF(重要成功要因)を明確化し、部門ごとに最適な生成AIを選択する全社展開への道筋を確立した点で、多くの企業にとって示唆に富む事例と言えるでしょう。

KONICA MINOLTA x DISCOVERIES

※1:Microsoft 365 Copilotは、Microsoft 365アプリケーションに組み込まれた生成AIアシスタントです。

コニカミノルタが直面した課題とディスカバリーズの支援背景

製造業は一般的に、営業、製造、研究開発、管理部門といった事業部ごとに業務の性質や文化、システム環境が大きく異なる「組織のサイロ化」という構造的な課題を抱えています。このような多様な現場に対し、トップダウンで一律のAI活用方針を展開しても、各部門の実態や期待値との間にギャップが生じ、形骸化するリスクがあることはご承知の通りです。

コニカミノルタは、中期経営計画「Turn Around 2025」の実現に向け、全社員の生産性向上と創造性の発揮を不可欠と捉え、AIの全社展開に取り組んでいました。2024年4月からは有志社員によるCopilotの先行導入を開始し、参加希望者が大幅に増加したことを受け、2025年10月からディスカバリーズの伴走支援が始まりました。

ディスカバリーズは、増員された参加者へのトレーニング支援と並行し、翌年度に控える全社展開トライアルという重要な局面で、推進チームが向かうべき方向性を明確にするための「コンセプトワーク」を実施しました。これは、多くのAIプロジェクトで見られる「スピード重視のあまり目的が曖昧になり、手戻りが発生する」リスクを回避し、戦略的な準備を進めるための重要なステップでした。

全社展開に向けた戦略的準備:ビジョンとKGI/KSFの明確化

全社展開トライアルを成功に導くため、ディスカバリーズはコニカミノルタの推進チームと共に、ビジョンとKGI(Key Goal Indicator:最終的な目標を定量的に示す指標)/KSF(Key Success Factor:KGI達成のために特に重要な要素)を明確化するコンセプトワークを実施しました。これにより、Copilotの導入・活用が単なるツール導入ではなく、経営方針や全社的なデジタル変革の一環であるという認識を全利用者に共有することを目指しました。

コンセプトワーク結果サマリー

コンセプトワークでは、以下の6つの要素を統合的に整理し、言語化しました。

  • 経営方針: 中期経営計画「Turn Around 2025」との整合性

  • チームのミッション: 推進チームが果たすべき役割

  • 企業の文化: 推進していく上で考慮すべき社風

  • DX戦略: 全社的なデジタル変革の狙い

  • 推進チームの価値観(思い): 推進メンバーが大切にしたいこと

  • 事業部門側の状況や期待値: 現場起点でのCopilotへの現状の取り組みと期待

コンセプトワークを構成する6つの要素

さらに、ビジョンを達成するための「戦略」と「ゴール」、「実行プロセス」を明確化し、「全社員の利用経験の創出」から「利用状況の可視化」、そして「部門ごとの継続判断支援」という段階的アプローチを設計しました。目標達成のためには、利用者の「認知→興味関心→理解」という行動変容プロセスを重視し、利用継続しない部門の理由も把握して改善につなげる方針です。

ビジョン達成に向けた戦略的アプローチ

データドリブンな意思決定を可能にする「Copilot利用状況レポート」

コンセプトワークで設計した戦略を実行に移すため、ディスカバリーズはMicrosoft Power BI(※2)を活用した分析用ダッシュボードを構築し、Copilotの利用状況を継続的にモニタリングできるようにしました。このダッシュボードは、推進チームだけでなく社内の誰もが閲覧できる形で提供されています。

※2:Microsoft Power BIは、Microsoftが提供するビジネスインテリジェンスツールで、データの可視化や分析に用いられます。

これにより、各部門の利用状況や効果が透明性高く共有され、現場の自律的な改善活動が促進されます。部門長は自部門の状況を客観的に把握し、継続判断を行える環境が整備されました。このデータの透明性は、サイロ化した組織構造において特に有効です。各部門が自部門と他部門の状況を比較することで、「自分たちはどう取り組むべきか」を自律的に考える土台が生まれるため、押し付けではない現場起点のAI活用を実現する上で不可欠な要素と言えるでしょう。

Copilot 利用状況レポート

ダッシュボードで可視化されている主な分析軸は以下の通りです。

  • 利活用状況:アクティブユーザー率や平均アクティブ日数の推移

  • 組織利用の深さ:組織別の利用頻度や操作回数

  • アプリ別・機能別分析:Teams、Outlook、Word、Excel、PowerPointなど、どのアプリで活用が進んでいるか

  • 効果分析:概算での合計削減時間

このダッシュボードにより、部門別の優先支援先の特定、効果的な活用パターンの特定、施策効果の検証、そして経営層への投資対効果の報告といった、データに基づいた戦略的な意思決定が可能になります。

現場の定着を促す段階的なトレーニング支援

コンセプトワークと並行して、ディスカバリーズは手挙げ参加した社員に対し、2025年10月から段階的なトレーニング支援を実施しました。参加者の利用段階やニーズに応じて、オンライン形式の基礎トレーニングと、関東・東海・関西の各拠点で対面形式のハンズオンワークショップを開催しました。

  • Copilot 基礎トレーニング: 生成AIの基礎、プライバシー・セキュリティ、試せる機能のデモンストレーション

  • プロンプト基礎トレーニング: プロンプト(生成AIへの指示文)の書き方、ビジネスシーンでの活用法

  • Copilot ハンズオンワークショップ: 実機を使った各アプリでのCopilot操作の実践

これらの支援により、部分導入フェーズにおいて、アクティブユーザー率99.2%、Copilot Chat利用率87.3%、Teams会議要約機能利用率97.6%という極めて高い利用実績が得られました。これは、Copilotが短期間で日常業務に定着し、業務効率化と生産性向上に大きく貢献していることを示しています。

アクティブユーザー率

AI活用を「現場起点」で推進するコニカミノルタの挑戦

2026年4月からスタートするコニカミノルタの全社展開トライアルは、「部門ごとに最適な生成AIを選び、確実に効果を出していく」というコンセプトのもと設計されています。これは、一律に単一のAIツールを全社に強制展開するのではなく、まず全社員がCopilotを試用し、各部門の業務特性や課題に対してどの程度有効かを1年間かけて検証する、現場起点の戦略的アプローチです。

このアプローチにより、「使わせる」のではなく「各部門が納得して選択する」AI活用の実現を目指しています。ディスカバリーズは、コニカミノルタの全社展開トライアルを引き続き伴走支援し、Copilotが単なる効率化ツールに留まらず、組織のイノベーションと価値創造の原動力となるAX(AI Transformation:あらゆる業務にAIを組み込んだ組織の変革)戦略を共に推進していく方針です。

「遠回りこそ最短ルート」コニカミノルタ担当者が語るコンセプトワークの価値

コニカミノルタ株式会社 DX推進室 室長の原田英典氏は、ディスカバリーズによるコンセプトワークの価値について、次のように述べています。

「手挙げ制での高い成果を目の当たりにし、『このまま全社展開トライアルに進めば一定の成果が出る』という期待がありました。しかし同時に、『本当にこのまま進めていいのか』という一抹の不安もありました。ディスカバリーズ様から『全社展開の前に、推進チームとして向かうべき方向を明確にしませんか』と提案をいただき、コンセプトワークに取り組むことを決断しました。正直、当初は『遠回りではないか』とも感じましたが、実際にチームで時間をかけて議論を重ねる中で、それぞれが持っていた前提や目指したい姿が微妙に異なることに気づかされました。」

「このプロセスを経たことで、推進チームの結束が格段に強まり、『なぜやるのか』が腹落ちしました。今では、あの時間は決して遠回りではなく、むしろ最短ルートだったと確信しています。全社展開では、各部門が自律的に判断できる環境を整え、押し付けではない真のAI活用を実現していきます。ディスカバリーズ様には、引き続き伴走いただき、当社の変革を共に推進していただくことを期待しています。」

コニカミノルタ株式会社 DX推進室 室長 原田英典氏

この事例は、AI導入において、技術的な側面だけでなく、戦略的な視点から「何を目指すのか」を明確にすることが、結果としてプロジェクトを成功に導く最短ルートであることを示しています。貴社のAI活用戦略を再考する上で、このコニカミノルタの事例が参考になれば幸いです。

関連情報

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

沖縄で3匹の猫たちと暮らす「沖縄の黒猫」と申します。スマホやAIの進化で色々な情報が簡単に手に入る便利な時代ですが、得た情報を実践するのは凄く難しいので、得た情報を記事にすることで色々行動出来る様になりたいと思い、サイトを運営しています。

コメント

コメントする

目次