調査から見えてきた中間管理職の現状
今回の調査結果からは、中間管理職が抱える問題点と、従業員の意識の変化が明確に読み取れます。主な調査結果について詳しく見ていきましょう。
約半数が実質的なマネジメント業務に従事
現在の役職について尋ねたところ、「管理職である」と回答した人は39.7%でした。これに対し、「役職なしだが実質的にマネジメント業務あり」と回答した人が12.3%存在します。これらを合わせると、全体の52.0%が何らかの形で管理・調整業務に従事していることになります。

この結果は、役職手当や正式な権限が十分に与えられないまま、実質的な責任だけを負う「名ばかりマネジメント層」が一定数存在している可能性を示唆しており、組織図上の役職定義と実務の実態との乖離が現場の疲弊を招く要因となっていると考えられます。
6割以上が「管理職になりたくない」と回答
将来的に管理職になりたいかどうかという問いに対して、「あまりなりたくない」と回答した人が63.3%に達し、「なりたい」の36.7%を大きく上回る結果となりました。

この「管理職離れ」とも言える傾向は、企業にとって次世代のリーダー育成が極めて困難な状況にあることを示しています。個人の生活やメンタルヘルスを優先する傾向が強まる中で、管理職の「負担」が「魅力」を上回っている現状が浮き彫りになりました。
管理職を忌避する最大の理由は「責任・プレッシャーの増大」
管理職になりたい、またはなりたくない理由(複数回答)では、「責任・プレッシャーが増えるから」が52.3%で最多でした。次いで「長時間労働になりそうだから」が33.3%、「部下育成や人間関係が面倒だから」が32.0%と続きます。

一方で、ポジティブな理由である「報酬・給与が上がるから」は31.3%に留まり、責任感による精神的負担や時間的拘束を相殺できるほどの経済的インセンティブを感じられていないことが示されています。人事労務の観点からは、単なる給与改定だけでなく、管理職の「職務範囲」を再定義し、過度な責任集中を分散させる組織設計が急務であると考えられます。
半数以上が実感する管理職の「罰ゲーム化」
自社の管理職が「罰ゲーム化」していると感じるかどうかについては、「ある程度感じる」45.7%と「非常に感じる」11.0%を合わせ、56.7%が肯定的な反応を示しました。

「罰ゲーム」という言葉が浸透している背景には、プレイングマネジャー(実務と管理職業務を兼務する管理職)としての過剰な業務量、ハラスメント対策への過度な神経質、そして上意下達の板挟みといった、現代特有の閉塞感があります。一般社員が自身の将来像を上司に見る際、そこに希望ではなく「苦労」を見出している現状は、組織の持続性にも影響を及ぼす可能性があります。
ストレスの主因は「上司・経営陣からのプレッシャー」
管理職の仕事で最もストレスを感じる要素は、「上司・経営陣からのプレッシャー」が30.7%でトップでした。次いで「業績・数字責任」16.3%、「部下育成・評価」11.7%となっています。

部下との関係性よりも上層部との関係性に強いストレスを感じている点は注目に値します。組織の結節点である中間管理職が、上からの要求を咀嚼しきれずに現場へ下ろさざるを得ない「防波堤」としての限界を迎えている様子が伺えます。経営層は、中間管理職を単なる「伝達役」としてではなく、戦略を共創するパートナーとして尊重し、孤立させないサポート体制を構築する必要があります。
「静かなる退職」の認知度は約7割
「静かなる退職(Quiet Quitting)」についての認知度は、「名前は聞いたことがある」35.3%が最多でした。「よく知っている」は11.0%、「正直よくわからない」は29.7%、「全く知らない」は24.0%という結果になっています。

この言葉の概念が着実に広がっている事実は、従来の「滅私奉公」的な働き方への強烈なカウンターとして、表面上は真面目に勤務していても、心の中では組織と心理的距離を置いている従業員が潜在的に増えている可能性を示唆しています。
過半数が「最低限の範囲での働き方」を意識
自身が最低限の範囲での働き方を意識しているかという設問では、「状況に応じて最低限を意識している」45.0%と「いつも最低限で働いている」8.7%を合わせ、過半数が「やりすぎない働き方」を選択しています。

この結果は、多くの従業員が「給与に見合った以上の努力はしない」という合理的、あるいは諦めを伴った姿勢で業務に臨んでいることを示しています。特に管理職の多忙さやプレッシャーを目の当たりにしている一般社員にとって、頑張りすぎることは「罰ゲーム」への片道切符に見えているのかもしれません。エンゲージメント向上を叫ぶ前に、まずは「頑張ることが損ではない」と思える納得感のある評価・処遇制度の整備が求められます。
理想の管理職像は「効率性」と「ワークライフバランス」
理想の管理職像(複数回答)では、「効率的にチームを回して成果を上げる」53.7%と「ワークライフバランスを尊重する」51.3%が上位を占めました。次いで「評価・報酬を公平にする」38.3%、「部下の成長・キャリア支援を重視」37.0%と続きます。

かつての「24時間戦う」マネジャーではなく、スマートに業務を完結させ、部下の私生活も大切にする「マネジメントのプロフェッショナル」が求められていることが分かります。自身の成果よりも「チームメンバーの利益と成長」を最大化させる調整役としての期待が高まっていると言えるでしょう。
企業が取り組むべき3つの課題
今回の調査結果は、日本企業の多くが抱える「中間層の空洞化」と「労働意欲の変容」を明確に映し出しています。「管理職離れ」や「静かなる退職」は、従業員のわがままではなく、過剰な負荷と不透明なリターンのバランスが崩れたことによる必然的な結果と言えるでしょう。企業が持続的な成長を遂げるためには、以下の3点に注力すべきです。
- 管理職の職務再定義: プレイング業務(実務)を削減し、マネジメントや部下との対話に専念できる「時間的・精神的余裕」を創出すること。AIやDX(デジタルトランスフォーメーション)ツールを活用し、事務作業や細かな調整業務を効率化することが求められます。
- 心理的安全性の確保: 上層部からの過度なプレッシャーを緩和し、板挟み状態にある中間管理職を支えるメンタルヘルスケアと支援体制を強化すること。経営層は中間管理職を単なる伝達役ではなく、戦略を共創するパートナーとして尊重する姿勢が重要です。
- 成果と報酬の直結: 責任の重さにふさわしい、圧倒的な魅力(報酬・権限・経験価値)を再設計し、昇進へのモチベーションを再構築すること。頑張ることが損ではないと思える納得感のある評価・処遇制度の整備が不可欠です。
管理職が生き生きと働き、一般社員がその背中を追いかけたくなるような組織文化への転換。それこそが、今後の企業成長を左右する最大の鍵となるに違いありません。
詳細な調査結果は以下の記事でご確認いただけます。
「管理職=罰ゲーム」と感じる層が56.7%に!300名調査から見る昇進忌避と「静かなる退職」の連鎖
調査概要
| 調査対象 | 企業で働く男女300名 |
|---|---|
| 調査方法 | インターネット調査 |
| 調査日 | 2025年2月17日~2025年3月3日 |
| 掲載記事 | 「管理職=罰ゲーム」と感じる層が56.7%に!300名調査から見る昇進忌避と「静かなる退職」の連鎖 |
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