越境学習を単なる経験で終わらせない:組織の実践を変える「検証装置」としての活用
近年、多くの企業で人材育成や組織開発の一環として越境学習が導入されています。しかし、「越境中は刺激や学びを感じるものの、元の職場に戻ると仕事の進め方や判断の質がほとんど変わらない」という課題に直面している組織も少なくありません。この状況に対し、人的資本開発プランニング®センターは、国内33.8万人・980社の行動データ分析に基づき、越境学習を真の成果へと結びつけるための実践レポートを公開しました。
結論から申し上げますと、越境学習は単なる個人の「育成施策」として捉えるのではなく、組織の仕事が「前提が崩れたときに判断が立ち上がり、実践が変わる構造になっているか」を可視化する「検証装置」として機能させるべきです。この視点を持つことで、越境学習をより効果的に活用し、組織全体の学習能力を高めることが可能になります。

越境学習が仕事を変えない根本原因
越境学習が期待通りの成果に繋がらない主な原因は、個人の意欲や越境内容の善し悪しにあるわけではありません。分析の結果、実際に起きているのは、越境で得られた気づきや違和感が、元の職場で「判断」として適切に扱われていないという、仕事構造上の問題であることが明らかになりました。
具体的には、学習が成果に結びついている組織では、以下の点が共通して見られます。
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判断の前提条件が成果物として明示されている
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代替案と選択理由が記録として残っている
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その判断結果が、次の仕事の条件として更新されている
一方で、成果につながらない組織では、感想や経験談は共有されるものの、成果物は結論や正解、対応内容のみで構成され、判断の痕跡が仕事に残らない傾向があります。この決定的な差は、越境の有無ではなく、元の職場の仕事が判断を扱う構造になっているかどうかに起因しているのです。
「学習が成立している状態」の明確な定義
人的資本開発プランニング®センターは、越境学習を次のように定義しています。
越境学習とは、
- 前提が崩れ
- 正解のない状況で判断を引き受け
- その判断が、元の職場の実践を具体的に変える
このプロセスが成立している状態を指します。重要なのは、学習の判定点を「越境中の体験」ではなく、越境後の仕事の変化に置いている点です。これにより、越境学習の真の価値を測ることができます。
最小コストで学習を成立させる「仕事設計」の実装
では、どのようにすれば越境学習を成果に繋げることができるのでしょうか。本レポートでは、精緻な評価制度や複雑なKPIを設計せずとも、次の3点を成果物として確認するだけで、学習成立の有無を判定できると示しています。
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前提: 今回の前提条件が成果物に明示されているか
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判断: 不採用案と、その理由が記載されているか
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更新: 次回に向けて、前提・判断基準・手順のいずれかが更新されているか
さらに、会議・報告・レビューに共通で使える仕事の仕様変更テンプレートが提示され、上記の3点が確実に成立する最小実装手順が具体的に解説されています。これにより、組織は最小限のコストで学習の構造を改善し、越境学習の成果を最大化することが可能です。
まとめ:組織の学習構造を見直し、越境学習を真の成果へと繋げる
越境学習は、個人の成長だけでなく、組織全体の学習能力を高める可能性を秘めています。しかし、その効果を最大限に引き出すためには、単なる経験提供に留まらず、組織の仕事設計そのものを見直すことが不可欠です。本レポートで示された「前提」「判断」「更新」の3つの視点を取り入れることで、越境学習を組織の実践を変える強力なツールへと昇華させることができるでしょう。管理職や専門職の皆様には、この機会に組織の学習構造を再評価し、より効果的な人材育成と組織開発を推進していただきたいと存じます。
レポート概要
人的資本開発プランニング®センターが公開した実践レポート『越境学習を成果に変えるための実践』は、越境学習が成果に結びつかない構造の分析、学習が成立する仕事設計の定義、そして最小実装で実務を変える具体手順を詳述しています。経営層、人事・人材育成担当者、管理職の方々にとって、実務に役立つ情報が満載です。

人的資本開発プランニング®センターは、33.8万人に及ぶ行動データ分析を基盤に、人の成長や育成を個人の問題に還元せず、仕事・役割・判断構造の設計から捉え直す研究と実践を行っている機関です。より詳細な情報は、リクエスト株式会社のウェブサイトをご確認ください。
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リクエスト株式会社:https://requestgroup.jp/corporateprofile
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代表取締役 甲畑智康:https://requestgroup.jp/profile


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