働く熱量の二極化が進む背景
この二極化の背景には、働き方の多様化とそれに伴う職務の複雑化があります。主体的に価値を創造する層と、必要最低限の業務のみを遂行する層(静かな退職)との乖離が深まっているのです。「静かな退職」とは、従来の熱心な勤務姿勢を捨て、自分の職務に対して最低限の責任だけを果たすという働き方を指します。詳細については、リクルートマネジメントソリューションズの解説をご参照ください。
また、「パープル企業」のような、表面的な不満がないにもかかわらず従業員の意欲が失われるリスクも指摘されています。「パープル企業」とは、違法な長時間労働やハラスメントが横行するブラック企業ではないものの、仕事のやりがいや成長機会に乏しい企業を指す言葉です。これについては、日本の人事部の解説が参考になります。
人的資本経営が広がる現代において、企業価値を創造する資本として従業員の能力を最大限に引き出すことは不可欠です。個々のパフォーマンスは仕事への意欲に大きく左右されるため、企業は従業員のモチベーション変化や貢献度を適切に把握する必要があります。しかし、「仕事への熱量の低下」は表面化しにくく、見過ごされがちなのが現状です。
調査結果から見る従業員エンゲージメントの実態
jinjer株式会社が企業に勤める従業員1,202名を対象に実施した「働く熱量の二極化に関する実態調査」では、以下のような具体的な課題が浮き彫りになりました。調査期間は2025年10月17日~10月18日です。

「静かな退職」状態の従業員が約3割
退職はしていないものの、指示された最低限の仕事のみをこなす状態を指す「静かな退職」に近いと感じたことがあるかという問いに対し、「明確にそう感じている」と「ある程度そう感じている」を合わせた29%が経験していると回答しました。

直近1年間で仕事の「やる気」や「やりがい」がどのように変化したかを尋ねると、「変わらない」と回答した人が52%と過半数を占めました。「増えた層」は23%に対し、「減った層」は25%と、わずかながらやる気が減った層が上回る結果となっています。

モチベーションの源泉と低下の要因
仕事へのやる気ややりがいが「増えた」と感じる主な理由としては、「新しい挑戦の機会が増えた」(23%)、「周囲に感謝される/頼られる機会が増えた」(22%)、「難しい課題を“成長のチャンス”と感じるようになった」(22%)が上位を占めました。成長機会の提供と他者からの感謝・承認が、熱量向上に大きく寄与していることがわかります。

一方で、やる気ややりがいが「減った」と感じる理由のトップは「成果が正当に評価されないと感じる」(33%)でした。次いで「仕事に対する『目的意識』が薄れてきた」(31%)、「仕事の意義や目的を感じられなくなった」(25%)が続き、正当な評価の欠如と仕事の意義喪失が、熱量低下の大きな要因となり得ることが示されています。

また、仕事のやりがいを感じる瞬間として最も多かったのは「給与・昇給・評価が上がった時」(36%)であり、金銭的な報酬や待遇面での評価が、精神的な満足と同等、あるいはそれ以上に重要視されていることが明らかになりました。

最近の働き方の変化としては、「指示された範囲の仕事だけを淡々とこなすようになった」が26%で最も高く、次いで「自発的な提案や発言が減った」(23%)、「新しい仕事や挑戦を避けるようになった」(20%)と続き、仕事への積極性が低下する傾向が見て取れます。
従業員のモチベーション把握の不十分さ
職場で従業員のモチベーション変化や働く熱量に気づいてもらえる環境があるかという問いに対し、「ほとんどない」(36%)、「一部あるが十分ではない」(27%)と回答した人が合わせて63%に上りました。これは、多くの職場で従業員のエンゲージメント低下を見逃すリスクがある現状を示しています。

AI・新技術の登場がもたらす影響と意識
AIや新しい技術の登場により「自分の仕事の価値や意義」を見失いそうだと感じるかという問いには、32%が不安を抱えていると回答しました。一方で、「AIを使いこなすことが新しいスキルになると感じる」が26%で最多となり、AI時代における新しいスキル習得に意欲的な層が多いことがうかがえます。


また、AIや新しい技術の登場を「自分の成長チャンス」だと感じるかという問いには、34%が肯定的な回答をしました。技術革新を前向きに捉える層が一定数存在することがわかります。

従業員の継続意欲を高める要因
従業員が「もう少しこの会社で頑張ろう」と思えるきっかけとして最も多かったのは、「公平な評価や報酬への納得感」(33%)でした。次いで「自分の成長やスキルアップを実感できた時」(32%)、「仕事以外の時間(家庭、趣味など)も尊重されていると感じた時」(27%)が続き、金銭的・待遇面での納得感と自己成長の実感、そしてワークライフバランスへの配慮が、離職を防ぎ、継続的なモチベーションを維持する重要な要因であることが示されました。

企業が取り組むべき対策
jinjer株式会社の人事本部 本部長である末廣氏のコメントにもあるように、「働く熱量の二極化」や「静かな退職」は、個人の意欲の問題だけでなく、企業側の制度設計課題と捉えるべきです。成果や役割への期待が十分に言語化されず、評価や報酬と結びついていない状態では、働く人の熱量は徐々に下がっていきます。問題は、その変化の多くが表面化せず、企業が気づけていない点にあります。

人的資本経営において本当に重要なのは、制度の有無ではなく、個人の変化を早期に捉え、適切なタイミングで対話し、評価や育成に反映できているかどうかです。人事の役割は管理ではなく、データを通じて人と組織の変化を可視化し、確信を持った意思決定を支えることにあると考えられます。
統合型人事システム「ジンジャー」は、人事労務・勤怠管理・給与計算・人事評価・サーベイ・データ分析といった幅広い人事業務を、1つの人事データベースで管理できるシステムです。これにより、正確な人事データに基づいたAIによる定型業務の自動化や、人的資本経営に向けた高度なデータ活用を実現し、業務効率化と組織の意思決定の質を高めることを目指しています。統合型人事システム「ジンジャー」の詳細はこちらをご覧ください。
まとめ
従業員の熱量の二極化や「静かな退職」は、単なる個人の問題ではなく、企業側の制度設計やエンゲージメントマネジメントの課題です。データに基づいた個人の変化の早期把握、適切な対話、評価・育成への反映が、人的資本経営を推進し、組織全体の活性化に繋がる鍵となります。従業員一人ひとりの可能性を最大限に引き出すことが、これからの企業成長には不可欠であると言えるでしょう。
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