介護・障害福祉現場のAI活用実態:8割の職場でルール不在、従業員満足度向上には「AIルール整備」が年収アップの約2.2倍効果

目次

介護・障害福祉現場におけるAI活用の現状と課題:8割の職場でルールが未整備

介護・障害福祉の現場では、生成AI(※1)の活用が急速に進展している一方で、多くの職場でその利用に関する明確なルールが不足しており、個人情報漏洩のリスクが高まっていることが明らかになりました。

株式会社パパゲーノが運営する「パパゲーノAI福祉研究所」が2025年12月21日に公表した調査報告書によると、従業員満足度(eNPS)の向上には、年収アップよりもAI活用ルールの整備が約2.2倍効果的であることが示されています。

本稿では、この調査結果を基に、介護・障害福祉現場のAI活用実態と、管理職や専門職が今すぐ取るべき具体的な対策について解説します。

(※1)生成AI:テキスト、画像、音声などのデータを学習し、新しいコンテンツを生成する人工知能。ChatGPTなどが代表的です。

生成AIツール使用頻度

AI活用がもたらすリスクと従業員満足度への影響

現場に広がる「シャドーAI」の危険性

調査結果からは、介護・障害福祉現場における生成AIの利用が広がる一方で、その管理体制が追いついていない実態が浮き彫りになっています。回答者の71.2%が週1回以上AIを使用しており、2025年に入ってから使い始めた人が40.7%と、利用が急速に増加しています。

しかし、職場で明確なAI活用のガイドラインやルールがあると回答したのはわずか19.8%に過ぎません。「ない」と「分からない」を合わせると、実に80.2%の職場でルールが整備されていない状況です。

無料版のAIサービスを個人で利用している人が44.4%に上り、個人情報漏洩のリスクが極めて高い状態です。特に社会福祉法人では、個人による無断のAI利用が顕著に見られます。

生成AI系のサービスの利用環境

利用者に関する記録や計画書の作成に生成AIを使用したことがある人は48.2%に達しており、要配慮個人情報を含む支援現場の情報がAIに入力されているケースも少なくないことが伺えます。

生成AIの使用について、あなたの職場では明確なルールやガイドラインがありますか?

さらに、記録等への生成AI利用について上司に報告・相談している人は41.4%にとどまり、事業所が把握していない「シャドーAI」(会社に無断で生成AIを使い個人情報漏洩を起こすリスク)の存在が浮き彫りになりました。

記録等への生成AI使用について、上司や同僚に報告・相談していますか?

従業員満足度とAIルール整備の意外な関係

この調査で特に注目すべきは、従業員満足度(eNPS)とAI活用ルールの整備に関する分析結果です。重回帰分析(※2)を実施した結果、AI活用ルールの整備が従業員満足度に与える影響は、年収アップの約2.2倍であることが判明しました。

(※2)重回帰分析:複数の要因(独立変数)が、ある結果(従属変数)にどのように影響するかを統計的に分析する手法です。

重回帰分析の結果

これは、「給料が低いから、介護福祉の従業員満足度が低いのは仕方ない」という従来の考え方に一石を投じるものです。AI活用ルールの整備は、組織としての方針の明確さ、新技術への前向きな姿勢、スタッフへの配慮やサポート体制の表れとして、従業員満足度に大きく寄与していると考えられます。

法人形態別に見ると、社会福祉法人(eNPS: -48.28)や医療法人(eNPS: -66.67)は、一般社団法人・一般財団法人(eNPS: 21.43)やNPO法人(eNPS: 18.75)と比較して従業員満足度が低い傾向にあり、AIルール整備の遅れがこの差に影響している可能性も示唆されました。

管理職・専門職が今すぐ取るべき3つの行動

これらの調査結果を踏まえ、介護・障害福祉現場の経営者や管理職の方々には、以下の3点を提言します。

1. 事業所でのAI活用ルールを明確にする

既に現場の従業員は、上司や会社に報告せずに生成AIをさまざまな業務に活用しています。「使っていいのかわからない」という曖昧な状態は、スタッフのストレスにつながりかねません。「シャドーAI」を防ぐためにも、どのような場面で、どのようにAIを活用してよいのかを明確に示し、ガイドラインを策定することが重要です。これにより、従業員は安心してAIを活用できる環境が生まれます。特に社会福祉法人や医療法人では、AIのルール整備がないことが従業員満足度の低下につながっている可能性も示唆されており、早急な対応が求められます。

2. 「AI導入で大きな変更が必要」と感じさせない

AIは業務を根本から変えるものではなく、日々の業務を少し楽にするツールとして位置づけるべきです。大がかりな変革として導入するのではなく、段階的な導入や、既存業務に馴染みやすい形での活用を検討し、従業員の抵抗感を減らす工夫が必要です。

3. 「AIの正しい使い方」の研修に投資する

調査では、92.9%の回答者が「AIの使い方を学ぶ機会が必要」と回答し、AI関連研修への参加意向も88.3%と非常に高いことがわかりました。現場はAIを学ぶ意欲があるのです。生成AIの基礎、適切な使い方(プロンプトの書き方など)、福祉・介護現場での活用事例、生成AIの限界とリスク(ハルシネーション、バイアスなど)、個人情報保護とAIに関する研修を積極的に提供することで、事故を未然に防ぎ、従業員のスキルアップと安心感を醸成できます。

福祉・介護の専門職向け研修で学んだAI関連の内容

株式会社パパゲーノでは、介護福祉施設に向けた生成AI研修や情報セキュリティ研修、社内ポリシーの策定コンサルティングを提供しています。支援現場のAI活用の法務リスクをまとめた書籍も出版予定とのことです。

本調査の詳細は、以下のダッシュボードや調査結果まとめページで確認できます。

専門職としての思考力とAIの共存

生成AIの活用が進む一方で、回答者の46.2%が「生成AIに頼りすぎると専門職としての思考力や判断力が低下する」と実感していることも見逃せません。AIはあくまで業務を支援するツールであり、最終的な判断は専門職の人間が行うという意識を従業員に持たせることが重要です。

生成AIに頼りすぎると専門職としての思考力や判断力が低下する

AIを活用しつつも、自身の専門性を高めるための学習機会を提供し続けることが、質の高い支援を維持し、従業員が自信を持って業務に取り組める環境を作るために不可欠であると言えるでしょう。


株式会社パパゲーノについて

株式会社パパゲーノは、「生きててよかった」と誰もが実感できる社会を目指し、「リカバリーの社会実装」を事業を通して行う会社です。精神・発達障害のある方を対象とした就労継続支援B型事業所「パパゲーノ Work & Recovery」の運営、支援現場のDXアプリ「AI支援さん」の開発・提供を行っています。

  • 会社名: 株式会社パパゲーノ

  • 所在地: 東京都杉並区上高井戸1-13-1 ルート上高井戸ビル 2階A号室

  • 代表者: 代表取締役CEO 田中 康雅

  • 事業内容: 就労継続支援B型事業所「パパゲーノ Work & Recovery」の運営、AI支援さんの開発、企業のDX支援

  • 公式ホームページ: https://papageno.co.jp/

  • 公式YouTube: https://www.youtube.com/@papageno_jp

  • パパゲーノAI福祉研究所: https://ai-fukushi.net/

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この記事を書いた人

沖縄で3匹の猫たちと暮らす「沖縄の黒猫」と申します。スマホやAIの進化で色々な情報が簡単に手に入る便利な時代ですが、得た情報を実践するのは凄く難しいので、得た情報を記事にすることで色々行動出来る様になりたいと思い、サイトを運営しています。

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