調査の背景と目的
JTBコミュニケーションデザイン ワーク・モチベーション研究所が実施した「働くシニアのモチベーションと上司からの評価に関する調査」は、日本の高齢化社会におけるシニア層の労働力としての重要性が増す中で、そのモチベーションの現状と、管理職からの評価とのギャップを明らかにすることを目的としています。本調査では、55歳以上をシニアと定義し、シニア社員本人と、彼らを部下に持つ管理職層を対象に実施されました。

働くシニアのモチベーションの現状
「定年の崖」と報酬減額がモチベーションに影響
定年まで2年を切ると、シニア社員のモチベーションが低下する傾向が見られます。一方で、再雇用・勤務延長となり2年以内の層では、モチベーションが高い人の割合が4割を超えていることが確認されました。
また、再雇用後の報酬減額が大きいほどモチベーションは低下する傾向にあります。特に、報酬の減額が1〜2割程度に抑えられている層では、モチベーションが高い人の割合が半数を超えており、報酬の減額幅が再雇用後のシニア社員のモチベーションに大きく関わっている可能性が示唆されます。


職場での居場所、人間関係、上司との関係性がモチベーションを左右する
職場に「自分の居場所がある」と感じるシニア層は、モチベーションが高い割合が57.1%に上ります。同様に、所属部門の「人間関係が良い」と感じる層も55.6%と高いモチベーションを示しています。
さらに、直属の上司に「相談がしやすい」と感じる層は55.0%がモチベーションが高いと回答しており、上司との良好な関係がシニア社員のモチベーションに大きく寄与すると考えられます。


「感謝」と「役に立っている実感」がモチベーションの源泉
仕事を通じて「相手から感謝されたり喜ばれたりすることがある」と回答した層は、モチベーションが高い割合が54.3%と高くなっています。
モチベーションが高いシニア層では、「自分が役に立っていると感じられる」(43.2%)や、自由記述で最も多く挙げられた「相手から感謝される/相手に喜んでもらえたとき」がモチベーションを支える主な要因です。一方、モチベーションが低い層では、「報酬がもらえる」や「ほかにしたいことがない」といった外発的・消極的な理由が上位を占め、約半数が「特になし」と回答しており、仕事へのモチベーションを支えるものを見出せていない現状が浮き彫りになっています。



モチベーションを低下させる要因とキャリアの後悔
全体的には「仕事内容・負荷」や「評価・処遇・給与への不満」がモチベーション低下の主な要因として挙げられています。モチベーションが高い層では「単純作業をやらされるとき」や「不必要なことだと感じたとき」など、仕事内容の物足りなさが目立ちます。
一方で、モチベーションが低い層では「仕事と報酬が見合わない」「給料が低すぎる」といった処遇への不満や、「人間関係がうまくいかない」「疎外感を感じる」といった人間関係に関する不満が多く見られます。

キャリアを振り返り「もっとやっておけばよかったこと」の1位は「専門的な知識・能力を身につけ、さらに高めること」(28.7%)、2位は「今の会社以外の人脈や人間関係を作ること」(23.2%)でした。定年が迫るにつれて「専門的な知識・能力」への後悔が増え、定年後は「社外の人脈」への後悔が多くなる傾向が見られます。

モチベーションが高いシニア層は、新しい知識を身につけるために時間を使い、孤立感が低く、心身ともに健康であることが示されています。また、部長クラス・本部長クラス以上の役職を持つシニア層は、モチベーションが高い人の割合が半数を超えているのに対し、一般社員ではモチベーションが高い人の割合は27.9%にとどまっています。


シニア社員の役割認識と上司の期待のギャップ
シニア社員本人が職場で果たしている役割として最も多く挙げられたのは「メンバーの一員として業務を遂行する」(53.4%)でした。しかし、上司がシニア社員に期待する役割として最多だったのは「知識や技術を次世代に継承する」であり、この点においてシニア本人の認識との間に大きなギャップがあることが明らかになりました。定年後再雇用のシニア層では「次世代への継承」の割合は高まるものの、3割には届いていない状況です。

管理職への提言:シニア人材を活かすために
これらの調査結果から、管理職としてシニア層のモチベーションを維持し、組織への貢献を最大化するためには、以下の点が重要であると理解できます。
1. 「定年の崖」への配慮と報酬の適正化
再雇用時の報酬減額は避けられない場合もありますが、その減額幅を考慮し、シニア社員が納得感を持てるような処遇を検討することが重要です。報酬がモチベーションに直結する層が存在することを認識し、公平性を保ちつつ、貢献に見合った評価を行うことが求められます。
2. 職場環境の整備と内的モチベーションの支援
シニア社員が「自分の居場所がある」と感じ、良好な人間関係を築ける環境を整えることは、モチベーション向上に直結します。また、「感謝される機会」や「知識・能力を活かせる機会」を意図的に創出することで、彼らの内発的モチベーション(自身の内面から湧き上がる意欲)を引き出すことができます。具体的な役割や責任を与えることも有効です。
3. 上司とのコミュニケーションの質向上
上司が相談しやすい存在であることは、シニア社員のモチベーションに大きく影響します。定期的な面談やフィードバックを通じて、シニア社員の貢献を具体的に認め、組織が期待する役割を明確に伝えることが不可欠です。これにより、シニア社員は自身の価値を再認識し、より積極的に業務に取り組むことができるでしょう。
4. 「次世代への継承」に向けた具体的な支援
上司がシニア社員に期待する「次世代への継承」を、単なる期待で終わらせず、OJT(On-the-Job Training)やメンター制度の導入など、具体的な役割と機会を提供することが求められます。シニア社員が自身の知識や経験を活かし、後進を育成することにやりがいを感じられるよう、積極的にサポートしてください。
5. 自己啓発の奨励
シニア層が「専門的な知識・能力を身につければよかった」と後悔している点も踏まえ、継続的な学習機会の提供や、社外との交流を促す制度を設けることも有効でしょう。新たなスキルの習得や人脈形成を支援することで、彼らのキャリアの選択肢を広げ、モチベーション向上に繋がります。
現代の職場において、シニア層は組織の中核を担う貴重な人材です。彼らが持つ豊富な経験と知識を最大限に活かし、若手社員との良好な連携を築くことは、組織全体の生産性向上と持続的な成長に繋がります。本調査結果を参考に、貴社のシニア人材戦略を見直してみてはいかがでしょうか。
詳細情報
本調査の詳細については、株式会社JTBコミュニケーションデザインのウェブサイトをご覧ください。


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