なぜ今、「人の器」が求められるのか
なぜ今、このような「人の器」が注目されるのでしょうか。その背景には、AIが瞬時に答えを導き出す現代において、人間に求められる役割が「正解を出す力」から「問いを立て、自ら意味を見出す力」へと変化していることがあります。特にリーダー層やビジネスパーソンは、単に成果を出すだけでなく、「揺れながら立ち続ける」という困難な課題に直面しています。
実際、日本能率協会マネジメントセンターの「管理職の実態に関するアンケート調査(2023年)」では、約77%の管理職が「なりたくない」と回答しており、その理由として精神的・身体的負担や仕事内容への適性・魅力の欠如が挙げられています。
このような状況から、多くの経営層は、次世代リーダーに必要とされるのはスキルだけでなく、人間的な成熟であると認識し始めています。本書が提唱する「器を磨く」という行為は、変化の時代を生き抜くためのリーダーシップの技術であり、人としての「構造」を整えることこそが、今最も求められる成長のあり方であると著者は語っています。
理論と実践が融合した「器を磨く」プロセス
本書は、成人発達理論の第一人者である加藤洋平氏と、その理論に深く共鳴し現場で人の成長を支えてきた株式会社チームボックス代表取締役の中竹竜二氏による共著です。両氏の協働により、理論が現場を照らし、現場が理論を進化させるという画期的なアプローチが実現しました。

本書の構想は、2024年秋にビジネス映像メディアPIVOTで行われた対談をきっかけに生まれました。この対談で、「器」という言葉が発達論よりもリアリティを持つという佐々木紀彦氏の一言が決定打となり、理論と実践を架橋するプロジェクトが始動したとされています。
本書の革新的な点は、読者自身が内省を通じて自分の器と向き合うプロセスを体験できるよう、各章が「問い」から始まる構成になっていることです。具体的には、以下の5つのプロセスを通じて器を磨くことを提唱しています。
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知る ― いまの自分に気づく。
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味わう ― 感情や矛盾をそのまま受けとめる。
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磨く ― 日々を振り返り、少しずつ整える。
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強くする ― 傷を抱えながら、再び立ち上がる。
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大きくなる ― 自分を超えて、他者へと広がっていく。
この体系は、カート・フィッシャー、ロバート・キーガン、スザンヌ・クック=グロイターの3つの成人発達理論を統合し、東洋的概念(器)、西洋的理論(成人発達理論)、日本的美学(金継ぎ)を融合させた世界初のものです。
「金継ぎ」に学ぶ、強く美しい器の再生
日本の伝統技法である「金継ぎ」に着想を得て、「壊れる」ことを恐れず、傷を抱えながらも再び立ち上がる力を「器の強さ」として描いている点も本書の特徴です。完璧を求めるのではなく、傷を抱えながら磨き続ける姿勢こそが真の成長であるというメッセージが込められています。
各界リーダー15名が証言する「器の磨き方」
さらに、元ラグビー日本代表HCのエディー・ジョーンズ氏、柔道の井上康生氏、花まる学習会代表の高濱正伸氏、ロイヤルホールディングス代表取締役会長の菊地唯夫氏、鳥貴族ホールディングス代表取締役社長の大倉忠司氏など、各界のリーダー15名による証言も収録されています。彼らの共通点は、成功よりも「葛藤や挫折と向き合い続けた」経験であり、その過程で器が磨かれ、結果として大きくなっていったプロセスが描かれています。
書籍情報と著者プロフィール
書籍情報
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書名:『「人の器」の磨き方 リーダーシップ・コーチングと成人発達理論による人間力の変容プロセス』
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著者:加藤洋平・中竹竜二
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発売日:2025年12月24日
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定価:2,090円(税込)
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発行:株式会社 日本能率協会マネジメントセンター
著者プロフィール
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加藤洋平氏: 成人発達学者。一橋大学商学部卒業後、デロイト・トーマツで国際税務コンサルティングに従事。米国ジョン・F・ケネディ大学で発達心理学とインテグラル理論の修士号を、オランダ・フローニンゲン大学でタレントディベロップメントおよび実証的教育学の修士号を取得。現在は成人発達理論の実践的研究と教育活動を展開しています。
ウェブサイト:「成人発達学の学び舎」
https://www.yoheikato-integraldevelopment.com/ -
中竹竜二氏: 株式会社チームボックス代表取締役。日本オリンピック委員会(JOC)サービスマネージャー。早稲田大学ラグビー蹴球部監督として全国大学選手権を連覇。日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクターを経て、現在はスポーツと企業の両分野でリーダーシップ開発・組織開発を行っています。
株式会社チームボックスのURL:
https://corp.teambox.co.jp
発売を記念し、2025年12月26日(金)20:00より、出版記念無料トークイベント(オンライン開催)が予定されています。著者の加藤洋平氏・中竹竜二氏が、執筆プロセスやPIVOT対談から生まれた背景を語る内容です。さらに、2026年1月には、本書を実践的に学ぶオンラインワークショップも開催される予定です。
まとめ
AIが知を与える時代において、その知をどう意味づけ、他者との関係性の中で活かすかは、まさに「人の器」にかかっています。本書は、知の時代から成熟の時代へのシフトを象徴する一冊であり、変化の激しい現代を生き抜くリーダー、そして自己成長を志す全てのビジネスパーソンにとって、新たな視点と具体的な指針を与えてくれるでしょう。ぜひご一読いただき、自身の「器」と向き合う機会としてください。


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