地方公務員が直面する構造的課題
地方公務員の採用を巡る環境は厳しさを増しています。総務省の調査によれば、地方公務員試験の受験者数は過去10年で約28%減少していることが明らかになっています(※1)。同時に、地方公務員の退職者数は増加傾向にあり、特に40歳未満の若手職員の離職が顕著であると、リクルートワークス研究所の調査でも指摘されています(※2)。
このような状況は、将来にわたって質の高い公共サービスを維持する上で看過できない問題です。職員が意欲を持って働き続けられる環境を整備することは、組織の持続可能性に直結する重要な経営課題と言えるでしょう。
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※1 総務省「地方公務員における働き方改革に係る状況―令和5年度地方公共団体の勤務条件等に関する調査結果の概要―」(2024年)
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01gyosei11_02000238.html -
※2 リクルートワークス研究所「臨界点が迫る公務サービス(1)―危機に瀕する職業としての地方公務員―」(2024年)
https://www.works-i.com/research/project/turningpoint/introduction/detail002.html
仙台市でのエンゲージメント調査とその結果
仙台市では、職員の「働きがい(エンゲージメント)」と「働きやすさ」の現状を定量的に把握し、本質的な課題を抽出するために、CAQNALと連携して総務局(対象125名)にてテストサーベイを実施しました。回答率は95%を超え、職員の組織改善への高い関心が伺えます。
調査から見えた組織の強みと課題
多角的なデータ分析の結果、仙台市総務局は全体として「働きがい」と「働きやすさ」のバランスが取れた良好な組織状態であることが確認されました。特に「人間関係の良さ」は、組織の強固な土台として評価されています。
一方で、将来の目標設定や業務上の余裕に関する項目では課題が見られました。次世代を担う中堅層職員において、業務量の多さからくる余裕のなさや、将来のキャリアビジョンが描きにくいといった現状が浮き彫りになったのです。これは、多くの企業組織においても共通して見られる課題ではないでしょうか。
組織エンゲージメント向上のための4つの施策
CAQNALは、これらの調査結果に基づき、短期・中長期の具体的な施策を以下の4つの観点から提言しています。
1. 働きがい(やりがい・目標意識)の再醸成
「課の目標への共感」は高いものの、それが個人の業務目標にどう繋がっているかが見えにくいという課題に対し、管理職と一般職員が「組織の目標」と「個人の役割」の繋がりをすり合わせる対話の機会を増やすことが提案されました。日々の業務が市民生活や市政にどう貢献しているかを再確認することで、業務への納得感とやりがいを高めることを目指します。
2. キャリア形成・成長支援の強化
キャリアへの不安を抱えがちな中堅層職員に対し、庁内公募制度の活用促進やメンター制度の導入が提案されています。各部署で得られるスキルや経験を明示し、職員が自律的にキャリアを選択できる環境を整えることで、将来への不安を解消し、成長意欲を引き出すことを狙います。
3. 公平な評価とマネジメント力の向上
上司・同僚との関係性は良好であるものの、面談が業務進捗確認や査定に留まりがちである点を改善するため、評価者研修や被評価者研修を通じて、1on1(ワンオンワン)面談を部下の成長を支援する場へと質的に転換することが提言されました。管理職の「対話力」と「育成力」の強化が鍵となります。
4. 業務プロセスの見直し
慢性的な「余裕のなさ」を解消するため、属人化した業務や形骸化した慣習、重複する事務作業など、業務過多を引き起こす構造的要因を洗い出すことが重要です。業務の棚卸しと可視化を徹底し、DX(デジタルトランスフォーメーション)による効率化や不要な業務の断捨離を行うことで、職員が本来注力すべき業務に時間と精神的な余白を創出することを目指します。
CAQNAL代表取締役 中島 篤氏の視点

株式会社CAQNALの代表取締役である中島 篤氏は、今回の調査について「仙台市職員の皆様の『より良い職場にしたい』という熱意を強く感じました」とコメントしています。人間関係の良さという組織の強みを活かしつつ、中堅層のキャリア不安や業務負荷といった課題に対して、制度と運用の両面からアプローチすることで、エンゲージメントはさらに向上すると確信しているとのことです。
CAQNALは、「人のチカラで『場』を興(おこ)す」をミッションに掲げ、組織人事、採用、人事制度、労務、DX、業務効率化など幅広い領域でコンサルティングを提供しています。豊富な実務経験を持つ専門家集団として、企画やノウハウの提供だけでなく、制度の定着まで伴走する支援スタイルを強みとしています。
まとめ:自組織のエンゲージメント向上に向けて
仙台市の事例は、多くの企業組織が抱える課題と共通する点が多く見られます。特に、中堅層のキャリア不安や業務負荷は、組織全体の活力を低下させかねない重要な問題です。今回の提言は、単なる表面的な対策に留まらず、対話の機会を増やし、キャリアパスを可視化し、マネジメントの質を高め、そして業務プロセスを根本的に見直すという、多角的なアプローチの重要性を示しています。
貴社の組織においても、従業員のエンゲージメントを向上させ、持続的な成長を実現するために、今回の事例からヒントを得て、現状の課題を洗い出し、具体的な施策を検討されてはいかがでしょうか。従業員一人ひとりがやりがいを持って働ける環境を整備することが、組織全体の生産性向上と競争力強化に繋がるはずです。


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